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原著凡例
以下、※印をつけた条項は、WEB版には無関係なものです。
凡例
- 予從來漢籍解題を完成するに意有り、本書は唯其一部分たるに過ぎず、後日を待ちて更に世に問ふ所有らんとす、而して其本書を編成するには大致左の二綱領を以てす。
- 歴代を通じて研究する者の必讀又は必ず參考すぺき書籍、
- 我國に於て普通に行はるる書籍、
- 本書は必讀又は必ず參考すぺき者と雖、我國に渡來せざる者、又は渡來せりと雖見るを得ざる者は、諸解題書を參酌して譯載し、未見の字を附す、其諸解題書に著録せざる者は、止むを得ず之を缺く、普通に行はるる者と雖、陋本例へば續文章軌範の如きは、文章軌範解題中に著して別に之を掲げず、然れども他書の附録として著する能はざる者のみは之を掲ぐ。
- 本書は、經、史、子、集、攻法、地理、金石、目録、小學、修辭、類書、雜書、叢書の十三門に分ち、毎門又數小欄に分つ、但目録、類書の二門のみ之を分たず。
- 毎門必ず小序を附して門名の意義沿革を示す。
- 毎門時代順に書を列し、毎時代著者生榮の順に列す、同時に生榮せし人は、大抵沒年順に據ると雖、劃然一定せざる者有り、盖し止むを得ざるに出づ。
- 毎書必ず卷數を標す、標せざる者は異同有る者なり、但經門群經欄及び、史門正史欄の一部分(十七史等)と、叢書門の大部分(家叢欄を除く)とは、異同有るに非ずして其卷數を標せざるは、此皆群書を合刻したる者に過ぎず、特に標示するの要無ければなり。
- 毎書、題名、作者、體裁、傳來、注解、參考の六項に分叙す、其序次は大抵一定すと雖往々然らぎるもの有り、何となれば、先づ作者を叙して題名に入らざる可からざるもの有り、傳來を叙して作者に入らざる可からざるもの有り、題名作者又は傳來體裁竝叙せざる可からざるもの有り、數者合叙せぎる可からざる者有り、故に其書に応じて宜しきを選びて之に從ふ、而して其主要なる書は特に詳叙し、然らざる者は略叙す。
- 經子二門に收むる書籍は、學説に屬する者なるを以て、大意の一項を増し、集門別集欄及び修辭門に收むる者は、詩文又は詩文論なるを以て、評論の一項を増し、集門總集欄に收むる書は、古今人の詩文を編撰せる者なるを以て編旨の一項を増す、而して特に大意を掲げ又は評論し編旨を示す要無き者は之を省く。
- 題名は其書名の解釋なり、然れども特に解釋を要せざる者は之を省き、未詳の者は之を缺く、又異名有る者は之を舉げ、其必要無きものは之を略す。
- 作者は其書の著者の傳にして、毎傳必ず出處を注す、其正史に列する人々は專ら此に據り特に必要有れば一二の他書に及び、正史に列せざる人々は參照せる諸書中に就きて其二三を列し、重なる人人例へば孔孟の如きに在りては特に數種を列す、又其未詳の者は字號郷貫或は官名を記するに止め、出處を注せず、字號郷貫と雖未詳の者は之を缺く、又同一人の者にして數門に分收する者は、一書に於て其傳を叙し、他書に於ては傳は某書の條に出づと曰ひて別に之を叙せず、而して其傳は共に皆簡略を主とす、是盖し此書の本領此に在らざればなり。
- 體裁は其書の記述する所は如何の事にして、如何に組織せられたるかを叙するを主とす、故に其書に由りて、或は類門を示し、或は條目を舉げ、或は記述の要を摘示し、一定せず。
- 傳來は其書に關するる内外の變遷、又は漢土及び我國に於ける諸家の研究及び版行の沿革等を叙述す、或は簡に或は詳に宜しきに從ひ一定せず、其我國に渡米せる年代は重なる書に限り、古記録文書に徴し、大概之を記述すと雖、脱漏少からず、遣憾とする所なり。
- 注解參考は、其書の全部又は一部分を、注釋考訂論説して一書を爲せる者のみを擇ぶ、一書を爲さずと雖必ず舉げざる可からざる者は特に舉ぐ。
- 注解參考二項相備はる者は相違舉し、一項に止まる者は單舉し、之無き者は缺く。
- 注解參考に舉ぐる所の書は、卷數及び著者を標示し、皆時代順に列す、同時代の書は著者生榮の時代によりて相前後し、最初に列する人に代名を標して他は省略に從ふ、又冩本にして卷數不明の者は册數を示し、然らざる者は其由を下に注す。
- 注解參考書を選擇する標準は、歴代を通じて相比較し、其必ず參考に資すぺき者を取る、故に僞托本と雖、可なる者は舉げて其由を注し、又坊間に行はれて人口に膾炙する者は、專門家の參考に資するに足らずと雖、流弊少き者に限りて、之を舉げ、以て初學者の便に供し、未だ見ざる者と雖、諸家の是とする所は之を舉げ、未見の字を附す。
- 大意は其書に記述る學説の大要を概叙す。
- 評論は其書に載する所の詩文又は詩文論を一貫して批評す。
- 編旨は其書の詩文選擇の主旨を叙す。
- 毎書の解題は必一一原本を反覆校覈し、又諸書を參酌して叙述し、以て公平を期す、而して異本は之を舉げて體裁を較叙し傳來を示す、但時に省略有り。
- 叙述中引據する所の諸説は、大概出處を舉ぐるも人名書名を掲ぐる時は之を舉げず、時には人名書名を掲げざるも之を舉げざること有り、例へば四庫全書提要を引用する時必しも一一之を標舉せざるが如き是なり。
- 叙述中、沿革を叙するに當り各時代には( )印を附して檢覽に便にす、書名にして代名を冠せるものには直に之に附印するもの有り、簡約に從ふなり。
- 叙述中引用する所の書籍は、原名を掲ぐと雖、略稱する者少からず、即ち漢志(漢書藝文志)、隋志(隋書經籍志)、唐志(唐書藝文志)、宋志(宋史藝文志)、總目(崇文總目)、讀書志(郡齋讀書志)、書録解題(直齋書録解題)、通考(文獻通考)、敏求記(讀書敏求記)、明志(明史藝文志)、四庫提要(四庫全書總目提要)、見在書目(日本國現在書目)、佐世の書目(同上)、先正事略(國朝先正事略)、耆獻類徴(國朝耆獻類徴)、尺牘小傳(清名家尺牘小傳)、詩人徴略(國朝詩人徴略)等の如き是なり。
- 叢書門中列する所の書籍の細目録には、皆卷數著者を示すと雖、間之を缺く者有るは、篇葉多からず別に卷を爲さざる者、又は遺佚を拾綴せる者に屬す、又叢書書を編輯せる着の考訂に疎なる爲めに時代又は著者を誤りたる者少からず、本書又其誤を改めざるは、盖し原書の眞を傳ふるに意有ればなり。
- 經門中、通禮雜禮は書名に非ず、然れども敍逸する所禮經を主として、何れにも屬し難き者有り、故に特に此二目を設けて之を收む、實に止むを得ざるに出づ。
- ※本書は書名索引を附し以て檢索の便に供す、索引は假名、畫の二に分つ、假名は五十音順により、ヰをイ、ヲをオ、ヱをエに合し、稱呼は大概普通行はるる者に從ふ、畫は首字の畫敷に由りて順次に排列す、劃數も亦皆皆通に行はるる所の康煕字典に從ふ。
- ※索引は書名の外に異名索引と作者人名索引とを附す、其畫引を省略するは輕重を分別するなり、而して體例は書名索引と相同じきも、漢土以外の人に在りては、本音に據らずして、漢音を用ふ、盖し一般讀者の便に從ふのみ。
- 未見の書にして其後見得たる者少からず、例へば春秋屬辭辯例編、春秋世族譜の如き已に我插架中に在り、然れども印刷既に成り、改削する能はず。
- 本書は匆卒の際に成りたるを以て、選擇敍述語竝に平を失ひ、誤謬脱漏亦少からず、將に再版の時を待ちて訂正し以て完璧を期せんとす。